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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第12章 二つの刃<弐>


(さて、どうしようか)

刀を構えたまま、汐は目の前の敵を見据えた。鬼は早く二人を殺したくてうずうずするように、無数の手を動かしている。
先ほどの炭治郎との戦いを見る限り、あの腕はいくら斬ってもすぐに再生する。それどころか、さらに数を増やされてしまえばこちらが圧倒的に不利になる。

考える間もなく、鬼は二人に向かって腕を伸ばしてきた。二人はすぐさま飛びのき、その攻撃をかわす。
炭治郎は先ほどの攻撃で負傷しており、動きが鈍くなっている。このまま消耗戦に持ち込まれれば彼が危ない。

鬼が巻き上げた土煙に紛れ、汐は炭治郎の腕を引き木の中に身を隠した。土煙が収まれば、当然二人の姿はどこにもない。

「どこだ!?どこにかくれた!?あいつらああああ!!!」

二人の姿を見失った鬼は、奇声を上げながら腕を振り回して周りの木々をなぎ倒す。見つかるまではそう時間はかからないだろう。
その間に、奴の対処法を考えなければ。

「炭治郎」
汐は炭治郎の止血をしながら声をかけた。炭治郎の目が汐を静かに映す。

「アイツの腕は斬ってもすぐに増えるし、手数が増えたらこっちが危ない。だから一気にアイツの頸を斬り落とす必要がある。そこで」

――あたしが、アイツの注意を引き付ける。だから、止めはあんたに任せたい。

「だめだ!それは許さない!そんなことをしたら君が集中的に狙われるんだぞ!それなら俺が・・・」

その言葉を聞いて炭治郎は激しく反対した。
鬼の強さは、炭治郎も身をもって知っていた。だからこそ、賛同するわけにはいかなかった。

しかし汐も引かなかった。何か言いたげな炭治郎の口を、汐は親指と人差し指と中指でつまんで黙らせる。

「あんたは怪我しているでしょうが。自分自身の体のことが分からない程、あんたも馬鹿じゃないでしょ。別にあんたに逃げろって言ってるわけじゃない。隙をついて、アイツの頸に技をぶちかましてほしいのよ」

そういって汐は笑う。しかし彼女から漂う匂いは、不安と恐怖のものだった。それでも必死で抗っている。

「だから、お願い。あたしを信じて、任せて」

そんな匂いを漂わせても、汐の声には迷いはなかった。その声を聞いた瞬間、炭治郎の心に熱いものが沸き上がった。
――この人は本気だ。本気で、奴に勝つつもりだと。
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