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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第8章 慈しみと殺意の間<弐>


――なによ、それ。それじゃあおやっさんは何だったの?
――それができるなら、おやっさんだって人間に戻せたじゃない
――あたしが、おやっさんを斬ることも、こんな思いすることもなかったじゃない

――ふざけるんじゃねぇよ

一瞬にして膨れ上がった殺意に、さすがの鱗滝も戦慄した。まだ年端もいかぬ少女が、こんな恐ろしい眼をする。それはまるで、鬼よりも恐ろしくて――
「禰豆子!?鱗滝さん!?」

突如背後から聞こえてきた声に、汐はびくりと肩を震わせる。驚愕と焦燥をまとった炭治郎と眼が合った。

「あ・・・あ・・・」

その眼を見た瞬間、汐の殺意がみるみるうちに収まっていく。まるで、波が引くように汐の中からどす黒いものが消えていった。

(あたしは、あたしはなんてことを考えていたの・・・?炭治郎に、あの人にこんな眼をさせるなんて・・・)
「ごめん、なさい。ごめんなさい」

そう何度もつぶやきながら、汐はへなへなとその場に座り込んだ。そんな彼女を、炭治郎は呆然と見ていることしかできなかった。
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