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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第3章 嵐の前の静けさ<弐>


走り込みを終え、筋力を上げる運動をしていると、気が付けば太陽はもう空の真上に上がっていた。皆、昼餉の準備をするため、各々の家に戻る。
汐も特訓を切り上げて、昼餉を用意するため家に戻る。
今日の献立は、調味料に付けた魚の漬け。汐は海鮮丼に、玄海は刺身にした。

2人が料理に舌鼓を打っていると、汐は何を思ったのか玄海に問いかけた。

「ねえおやっさん。朝言ってたおやっさんの薬を作ったのって、どんな人?」
いきなり問いかけられたにもかかわらず、玄海は箸を止めずに口を開いた。
「どんなって・・・そりゃあ別嬪な姉ちゃんに決まってんだろ。俺はどんなに優秀な医者だろうが、別嬪な姉ちゃん以外からは施しは受けねえ。これが俺の絶対的な鉄則だ」
「・・・聞いたあたしがバカだったよ」そう言って汐は、止めていた左手を動かした。

「お前、いつもそうやって俺の話を聞き流すけどよ。姉ちゃんはいいぞ!綺麗だしいい匂いだし、あの形成は見事なもんだ。いやぁ、神様はいいものをこの世に生み出してくれた!感無量だ」
「・・・そう言って何人もの女に逃げられた挙句、結局今現在まで独り身なんでしょ」汐のあきれ果てたため息が小さく響いた。

この後も汐は玄海にいくつか薬について聞いてみたのだが、相も変わらずな答えが返ってくるだけだったので、そのうち彼女は問いかけるのをやめた。

やがて日が沈み、あたりが暗くなりだしてきたころ。ようやく玄海が家の外に出てきた。
額に赤い鉢巻を締め、気合を入れた彼の怒号が響く。

「そうじゃねえ!もっと腹に力を込めろ!違う!何度言ったらわかるんだ!!へその下に岩を受けるような感覚でやりやがれ!」

玄海の指導は過酷を通り越してもはや地獄だった。少しでも教えと違うと、鼓膜が破れそうな程の音量で罵声が飛ぶ。
始めのころは恐ろしさのあまり泣きじゃくったり失禁したりもしたが、今はその声すらも彼女の糧になっていく。
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