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【鬼滅の刃】ウタカタノ花

第23章 遭遇<肆>


「鬼になってしまった人を、人に戻す方法はありますか?」

少し震える声で尋ねた炭治郎を見据えながら、珠世はゆっくりと口を開いた。

「鬼を人に戻す方法は――」

――あります。

珠世の言葉に、炭治郎は弾かれるように詰め寄ろうとする。が、愈史郎がそれを察し、瞬時に炭治郎の手をつかみ床に投げた。

「・・・愈史郎」

珠世の地を這うような低い声が響き、文字通り鬼の形相で愈史郎を睨みつけている。そんな彼女に愈史郎は殴ったのではなく投げたと言い訳をしたが、一蹴された。

「どんな傷にも病にも、必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことはできません。ですが、私たちは必ずその治療法を確立させたいと思っています。その治療薬を作るためには、たくさんの鬼の血を調べる必要がある。そのために炭治郎さん。貴方にお願いしたいことが二つあります」

一つ。妹さんの血を調べさせてほしい。
二つ。できるだけ、鬼舞辻の血が濃い鬼からも、血液を採取してきてほしい。

「禰豆子さんは今、極めて稀で特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが、おそらくはその際に体が変化している。通常それほど長い間、人の血肉や獣の肉を口にできなければ、まず間違いなく狂暴化します」

珠世は落ち着いた声で丁寧に説明する。そんな彼女の横顔を見つめながら、愈史郎は一人(珠世様は今日も美しい。きっと明日も美しいぞ)と、心の中でつぶやいた。

「しかし、驚くことに禰豆子さんにはその症状がない。この奇跡は今後の鍵となるでしょう」

(禰豆子・・・)

炭治郎は潤んだ瞳で禰豆子を見つめ、そしてそっと手を伸ばす。すると禰豆子は嬉しそうにその手を取ると、ぎゅっと握った。

「しかし、もう一つの願いは苛酷なものになる。鬼舞辻の血が濃い鬼とは即ち、鬼舞辻により近い強さを持つ鬼ということです。その鬼から血を奪るのは、容易ではありません」

――それでもあなたは、この願いを聞いてくださいますか?

炭治郎はそっと禰豆子に視線を移す。幸せそうな顔をしている彼女を見ながら、炭治郎は口を開いた。
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