第5章 Say goodbye
「みんな、大変なの!!」
ルーシーの切迫した声がギルド内に届いたのは神鳴殿の恐怖が去り、ナツとエルザ、そしてガジルがラクサスを倒したと連絡があった後だった。ルーシーに続いてビッグスローに敗れボロボロなグレイが中に入ってくるが、そのグレイが背負っているものに皆が息をのむ。
「早く、手当てを!!ノエルさんがっ!!」
グレイの姿など比ではないほど、凄惨な様子のノエルがそこにはあった。エルザとのやり取りを聞いていないギルドメンバーですらもすぐに分かった。
生体リンクの反動であると。
「何をしてる早く医務室に!!」
マカロフの容態を見るためにフリードの術式解除後リーダスが呼んで来ていたポーリュシカの怒声に、慌ててマカオとワカバはグレイに駆け寄りノエルを抱えて医務室へと駆け込んだ。
「…うっ」
「さっさと出ていき!」
「ワシまでっ!?」
ベッドに横たわらせた衝撃かノエルがくぐもった声で唸るとポーリュシカは二人の背を押し出し、医務室の外へ出す。ついでにと完全に良くなっていたマカロフもポイっと一掴みで追い出すとバタンと扉を締めた。
「あれ、大丈夫なのかよ…」
ノエルが着ていたのはルーシーの上着のみ。それは服が原型を留められなかったほどのダメージを負ったという事を表している。
普段であれば綺麗な女の肌に触れたなどと騒ぎまわるマカオとワカバも間近で見た傷の数々に言葉を失う。
「ねえ!?ラクサスは!?どこよ!!」
下唇を噛んで黙っていたカナであったが大事な親友の悲惨な様子に声を荒げる。
「…よせ、あいつも今やられて気を失ってる」
「いいや止めないね!!だってあの子は!!」
今にも飛び出して移行するカナをウォーレンとマックスが必死に止める。
「…悪い、カナや。少しそっとしてやってはくれんか」
「うっ…。うぅ…。ノエル…」
二人の拘束に抵抗するカナをあやすようにマカロフはポンと肩に手を置く。同時にカナは泣き崩れるのであった。
「きっちり落とし前はつけさせる」
「マスター…」
先程まで皆の身を案じていた好々爺の表情は、一つのギルドを守る厳格なマスターの顔に変わっていた。