第4章 Cry in the cathedral
外に出たノエルの目の前に広がる神鳴殿のラクリマ。数百にもなるそれはすべて破壊するということ自体難しく、その上一つ壊すだけで重傷を負う生体リンクが全てに施されている。一人で破壊し尽くすなど無理な話である。
「はあ…」
ノエルは大きなため息をついた後、誰もいない場所へ向かって駆け出す。そして、人として持てる力いっぱいで周りにいくつもの白い光を浮かべ始めた。光の玉は倍々と増えていき、ノエルの四方をすべて囲む。
「ごめんね」
謝罪とともにノエルは昔と変わらない薄い腹を一撫でする。
長年考えてきた問いの答えをこの時、愛しい彼のために決めたのだ。いや、あの日彼にこのフェアリーテイルに連れてきてもらった時から決まっていたのだろう。
私のせいで、ごめんなさい。あなたを産んであげられなくて、ごめんなさい。
ずっと一緒にいた我が子に別れの言葉を告げる。
私は、好きな人の助けになりたいの。
ノエルの放った光は空に在るラクリマ全てを破壊し、収穫祭を祝う花火のようにマグノリア一帯に打ち上げられた。
_____あなたを好きになれる人に成れなくて、ごめんなさい。