第3章 The world is mixed
医務室の扉がガチャリと開いた。ノエルがそちらを向けば、何故か魔物のツノが扉前にそびえ立っており目を丸くする。
「ノエル、頼まれてた薬草を取ってきた」
「…あ、ありがとうエルザ」
ツノの後ろから突然の来訪者、赤髪で鎧を着た女性エルザがひょこりと出てきてノエルに薬草の入った袋を渡してきた。ノエルが驚きながらも受け取れば、エルザは新しく用が出来たと早々に医務室を出ていった。
「なんでここまで持ってきたんだろう…」
ノエルの疑問に答えられる者もその物体も跡形もない。わざわざ聞きに外に出るほどでもないため、手に持った薬草をデスクに置き元々行っていた作業に戻る。
しばらくすれば窓ガラスがガタガタと揺れ、それは本来予定していた来客が到着した事を告げていた。手元のカードが軽く震えている。
「久しぶりね、ミストガン」
「ああ…。アニマの発生予定場所はどこだ?」
世間話すらする気が無く、単刀直入に本題に入る姿が先程来た誰かと重なりノエルは可笑しくて笑う。そっちが呼んだのにその態度は何だとムッとする姿も誰かに似ていて余計面白くなりクツクツと笑えば、帰り支度を始めたため慌てて引き止めた。
「アカリファの方よ。少しくらい話してからでもいいじゃない」
「少しでも早く塞がなければ。ノエル、貴方には感謝しているがそれ以外馴れ合うつもりは無い」
ミストガンが毅然とした態度でそう告げれば、ノエルは真剣な表情へと変化させミストガンに向かって言い放つ。
「どうせあなたがやってる事はただのイタチごっこ。根本的な解決にはならないし、まだ発生するのは先よ」
「そんなのは、分かってる。ただ今はこれしか方法がないし、それは貴方だって一緒だろう?」
責めるように発された言葉に睨み付け同じように言い返せばお互いに当てはまるのか冷たい空気がこの部屋を支配する。
「はあ…。そうね、私が悪かったわ。ごめんなさい」
「どちらが悪いという訳では無いだろう。力がないだけだ、貴方も。……私も」
「皮肉ね……」
ギルド最強に数えられているミストガンが後手に回るしかない始末。当然ノエルにも、ノエルだからこそ解決する糸口を見いだせない。
2人して未来を憂い、これ以上悪化しないように対処に回る事しか出来ない状況を嘆いた。