第2章 Re:birth
金髪の少年に手を引かれて歩く。彼の祖父らしい好々爺も泣いている彼女を見て何も言わずに歩き出した。
やがてある建物に辿り着き、小さな好々爺が何倍もあろうかという程の大きな扉を簡単に開ける。すると中から大きな声が響いてきた。
「「「「「お帰り、マスターとラクサス」」」」」
「クリスマスの買い出しの残りはちゃんと買ってきた…か。うおっ!?」
頼んでいた酒を受け取る為に荷物を左手に持ったラクサスに近づいたマカオはラクサスの後ろにいる小汚い物体に気づき、変な声を上げる。その声を咎めるようにラクサスはマカオを睨みつけ、その物体を引き連れて奥の医務室へとズカズカ入っていった。
「マスター!?ありゃなんだよ!!犬か!?」
「…さあ分からん」
「さあって…」
「こんな寒い日に外じゃ可哀想じゃろ。ラクサスが拾ってきたんじゃからラクサスが面倒見るじゃろうし、お前らは今まで通りクリスマスの準備をしとれ」
とぼけるマカロフにこれ以上何を言っても無駄だと察したメンバーは問いただすのを辞めマカロフの言いつけ通りにクリスマスの準備に戻った。
「何か欲しいものはあるか?」
ラクサスは彼女を医務室のベッドに座らせると顔に掛かっていた髪を掻き分け顔を見つめる。煤やホコリやらで汚れた肌に深海のような深い青色の目だけが輝いていた。
「……」
「あ?聞こえねぇよ」
蚊の鳴くような声で話す彼女に聞き取れず思わずラクサスは聞き返す。ラクサスの凄んだ様な声にビクリと肩を震わせた彼女に「悪ぃ」とラクサスは頭を搔きながら謝った。
「……み、水が欲しいです」
久方ぶりに喋ったのか何度か言葉になりきれていない声を出した後、ようやくラクサスの聞き取れる言葉が返ってきた。
ラクサスは医務室から1度出て、バーカウンターから水を貰い彼女に渡した。少しずつ、少しずつ身体に慣らすように水を飲む彼女を根気強く待ち飲み終わったのを確認し一呼吸置くと、ラクサスは彼女に声をかけた。
「名前は?」
「……」
「その格好はどうした?」
「……」
「何をしていたんだ?」
「……」
何も答えない彼女にはあ…と長い溜息を吐くとまた医務室を出ていった。