第53章 私を忘れないで…
「いいんスか…そんな理由でせっかくの隊長職を断って…」
ちょっと意地悪なことを言ってしまった
「そんな理由じゃないもんっ!喜助さんにとってはそんな理由かもしれないけど、私にとっては大事な理由で……ゲホッケホッ」
思わず早口になってしまった時、紫苑は咳き込んだ
胸元に手を当てる紫苑
夜一サンが紫苑を連れてきた時、調子が悪そうじゃから飯を食ったら休ませてやれ、という言葉を思い出した
「ごめんね、そんなつもりで言ったんじゃないんス」
喜助は紫苑の頭を優しく撫でた
「紫苑、ちょっと休んだら?」
「疲れが溜まっておるのじゃろ」
「風邪か?」
ある程度痛みが引いた紫苑は
「平気平気」
と笑顔を見せた
「朝ちょっと様子がおかしいとは思ったんスよ」
「え、気づいてたの?」
朝は、我ながら自然な演技ができたと思う
…ほんと、喜助さんには隠し事が通用しない
「ほら、部屋行きますよ。ご飯も持っていってあげますから」
「えぇ~でも皆とご飯食べたい…」
「元気になったらいつでも食べられますよ」
ブツブツ文句を言う紫苑を半分引きずるように、喜助は2階に上がった
「浦原さんて、紫苑のこと良く見てるんだな」
呟くようにボソッと吐いた一護の声は、琴乃にだけ聞こえていた
「悔しいの?」
琴乃は口元に手を当てて、ニヤニヤと楽しそうに一護を見つめる
「べ、別にそんなんじゃっ」
「へー」
紫苑の腰に手を回す浦原さんを、俺は羨ましそうに見つめていた
「さてと、紫苑と浦原さんにご飯持っていってあげよ」
琴乃は適当におかずをまとめると、2人を追いかけた
…─
「本当に平気なのに…」
半ば無理やり布団に寝かされた紫苑は、不満そうに言った
「今更そんなのが、ボクに通用するとでも?」
「うっ…」
「ちゃんと休んで、早く体調治してくださいね」
じゃないと……が…
「え?何か言った?」
「いえ、何も」
「なんか計画とか、言ってなかった?」
「言ってません言ってません」