第1章 助けられたカラ松
チビ太に誘拐されたカラ松は、兄弟たちに投げつけられた物が頭に当たり、意識を失って道端に放置された。
「はー。飲み会はいいけど、すっかり午前様だわ」
通りかかった○○が、そのカラ松を見つけた。
「だ、大丈夫ですか?!きゅ、救急車!!」
スマホで救急車を呼ぶ。
サイレンの音におそ松たちや近所の人たちが出てきた。
「救急車だ!」
「え。あれ、カラ松じゃないか?」
「どうせ演技だろ?すぐ起き上がるって」
「でも、一緒にいる人が声かけてるみたいだけど、起きないよ?」
「まさか、あの石臼が原因で…?」
「大丈夫だって」
「じゃあ、何で起きないんだよ?!」
「知らねぇよ!」
「あ、行っちゃったね…」
救急車はサイレンを鳴らしながら、去ってしまった。
「………やり過ぎだよな、明らかに」
「全部頭に当たってたよね…」
「だって、相手がチビ太だもん!冗談だと思ったもん!」
「俺もそう思ってた。でもあの様子だと、本当に…」
そこへ警官がやって来た。
「すみません。さっきの男性、お宅の前で倒れてたそうなんですが、何かご存知ですか?」
「え…」
おそ松たちが投げた物は、チビ太が持って行ってしまっていた。
「いえ、男性が意識不明の重体ですので、事情を聞くに聞けませんので」
「あ、あの」
何か言おうとしたチョロ松の言葉を遮って、おそ松が言った。
「俺たちみんな寝てて、サイレンの音で目が覚めたので、何も知りません」
「ちょ…!」
「そうですか。もし何か気づいたことがありましたら、ご連絡下さい」
「ご苦労様です」
警官が去った後、チョロ松はおそ松の胸ぐらを掴んだ。
「おそ松兄さん、どういうつもりだよ?!俺たち、当事者じゃないか!」
するとおそ松は声をひそめた。
「うるさい!あそこで俺たちがやりましたって言ったら、どうなる?!暴行罪に殺人未遂で、刑務所行きだぞ?!そうなったら、就活も外を歩くことも、できなくなるんだぞ?!」
「う………。で、でもそれって、カラ松よりも自分が大事ってことか?!」
「ああ、そうだよ!悪いか!元はといえば、チビ太にさらわれたカラ松が悪い!」
「うわー…。クズ兄貴…」
「退院したら、帰って来るって。そしたらみんなで、謝りゃいいじゃん」
「ちっ、めんどくさ」
「梨、用意しとこうね」