第8章 激動のパンフェスティバル
予期せぬヘルプが入ったことにより、パンの販売はスムーズに進む。
ムギとローが接客を、サンジがパンのカットと加熱を、そしてプリンがトッピングを担当した。
パティシエを目指しているだけあって、プリンの手際はとても良い。
急な寄せ集め集団とは思えぬほど連携が取れ、フェスの終了時間が来る前に、なんと出店中最初の完売御礼を飾った。
「やったーー! 終わったーーー!!」
夢のパンフェス参加は楽しいばかりではなかったが、こうしてバラティエのパンの良さを多くのお客さんに知ってもらえて、なおかつ一番に売り切れるだなんて嬉しくないはずがない。
だが、両手を上げて大喜びしているのはムギだけである。
サンジは経営者のくせに「よかったな、ムギちゃん」という謎の視線だし、プリンは相も変わらずツンギレしているし、ローにいたっては無だ。
無。
喜んでいないのは当然として、怒りも呆れもない無の表情。
はっきり言って、超怖い。
「は、はは……。」
上げていた両手をそろりと下ろし、作り笑いを絞り出す。
笑っている場合かと思われるかもしれないが、わかってくれ、笑うしかないのだ。
そんなムギを荒んだ目で見つめたローが、腕を組んだまま口を開く。
「……言いたいことは山ほどあるが、とりあえず、このあとはどうするつもりだ。」
「このあと……? ええっと、機材とかいろいろ片付けて、返却しに行かなくちゃいけないんだけど。」
パンフェスの開催は土日二日間だけれど、バラティエが出店するのは今日だけ。
でも、せっかくのパンフェスなのだから、勉強のために明日は客としてフェスを訪れることになっている。
つまりは、泊まりだ。
「あッ、いっけね……!」
声を上げたのはサンジで、その声色は珍しく困っている。
「どうしてんですか、サンジさん。なにかトラブル?」
「トラブルっつーか……、いや、俺のミスだな。ほら、もともとは俺とギンが来る予定だっただろ? だから、泊まる予定のホテル、一部屋しかとってねぇんだわ。」
「え……。」
どうせ寝るだけの部屋だからと、ツインで一部屋。
サンジとギンならば問題がなくとも、メンバーチェンジをしたがゆえに問題がありまくる。