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植物図鑑【リヴァイ/進撃の巨人】

第11章 「ノビル/セイヨウカラシナ」





「ツクシはどうするんだ」




『......もういい。気が済んだし』





味は無難だったが、
何しろ料るまでが手間だ。




あまり割りに合わない、
ということは思い知った。





『何かねー、夢のようにおいしい
イメージがあったんだよね。でも......』




「?」




『あのね、佃煮は佃煮として
普通においしかったの。


でも敢えて
ツクシじゃなくてもいいかな、くらい。


天ぷらもね、フキノトウと
食べたから対比でおいしく感じたけど、
要するにクセがないんだよね。


葉っぱだけ揚げてたら
フキノトウのほうがおいしかったかもって。


フキノトウの味噌漬けはおいしかったけど、
ツクシを味噌漬けにしたら
味噌味しかしないんじゃないかなーって』




「ほう、筋がいいなさやか。


ツクシは春らしくて見つけると
採りたくなるんだがな。


料る手間を考えると春を楽しむのに
少し採るくらいが良いんだ。


風味も強くねえしな。
火加減間違えると特徴がなくなる」





やがてリヴァイは足を止めた。





「ここから土手の途中に
下りたいんだが、さやか大丈夫か?」





さやかは土手から下を覗き込んだ。




傾斜は上から見る限りそれほどきつくない。





『行ける......と思う』





さやかの返事を聞いてから、
リヴァイが先に斜面を下りた。




そしてさやかに手を伸ばす。




何気なく、




当たり前のように
無言で差し出される手に、




さやかのほうが少し
躊躇してから手を預けた。




片手だけでさやかが下りるのを
支えるリヴァイは、見かけより
意外と力強かった。




......そうでなきゃ
行き倒れるまで歩いたりできないか。




上から見たより少しきつかった傾斜を、
リヴァイの手を頼って下りる。





『もう平気』





足場を確保してから
申告した声が微妙に小さくなったのは、




思ったよりも大きくて男っぽい手と、
それに預けた自分の手の対比が
不意に意識されたからだ。




自分の手は
華奢ではないと思っていたが、




それでも男の手に預けると
頼りないほど細い。


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