第5章 「気持ちが傾く」
健全! ド健全だ!
イマドキ高校生の部活の合宿でも
もうちょっと隙とか
いろいろあるもんじゃないの?!
何となく不満を鎮めるように、
さやかはカモミールの香りがする
お湯で顔を湿した。
......それでも。
エステの客引きノベルティなんか
男にわざわざ配るわけがない。
通りすがりに
リボンのついたパッケージで
何か女の子が喜びそうなものを
配ってるなと気がついて、
わざわざもらってきたのだろう。
最近、目に見えて
ささくれだっているさやかのために。
リヴァイは行き倒れの経験からか、
生活費を預かっている責任感からか、
無駄遣いを極端に嫌う。
食材の産地などには
それなりにこだわっているようなので、
足りないとは言ってこないが、
かなりギリギリで
やり繰りしているはずだ。
リヴァイの当座の
お金として渡した一万円も
寒暖定まらない季節を
乗り越える間に買い足す衣類や何かで
消えてしまったらしく、
バイトもまだ給料日を迎えていない。
それでも何かさやかを
気遣えないかと
考えてくれていたのだろう。