第1章 とある噂
今日もこの町は、サイレンスな朝を迎えている。俺はガラス越しの朝日を浴びながら、俺と共になった命たちに、感謝の祈りを捧げた。
「キモいから、やめて」
「死ね」
「普通に食えないのかな」
「いたーい、いたいっすよー」
ふっ。そんなブラザーたちの言葉など、俺には褒め言葉だ。バーン!
俺たちは知らない奴などいないほど、名が知れ渡ったマフィアだ。おっと、ヤクに手を出すわけじゃ、ないぜ?それこそクレイジーってもんだ。
俺たちは弱きを助け、強きをくじく、そう!ヒーローなのさ!
パコーン!!誰かに何かで叩かれた。
「ん?」
見るとおそ松が、丸めた新聞を持っている。おそ松は俺たちのリーダーだ。
「いつまでも、カッコつけてんなよ。似合わないって。それよりさ、あの噂、聞いた?」
「噂?」
「なんかね、俺たちのシマに、変な女がいるらしいのよ。俺たちみたいなマフィア見ると、こう言うらしいよ。雇ってくれって」
「あん?」
雇え?それはまた酔狂だな。興味が沸いたぜ。
「俺がそのいたずらなキティを、探してくるぜ」
「行ってらっしゃい、カラ松兄さん」
末っ子のトド松に見送られ、外へ出る。今日も太陽が、まぶしいな。
「ふふーん。よぅし、太陽。俺とどちらがまぶしいか、競ってみるか?」
なーんてな。さて、どこを探せばいいのやら。早いとこ噂のキティを見つけないと、バッドボーイたちにさらわれるかも知れん。
だが俺たちのシマは、結構広い。そんな中で、たった一人の女を見つけるのは、難しい。
「オーマイガッ!エイトシャットアウッ!」
そうだ。マフィアを見ると、やってくるということは、だ。
「下手に歩きまわるより、ここでステイしていれば、いいわけだ」
冴えてるぜ、今日のお・れ!
壁に寄りかかり、キティを待つ。あの女か?…違うか。こいつか?…これも違う。……あ。
「…オゥ、シット…」
女の特徴、聞いてなかった。今更戻っても、馬鹿にされるだけだ。
「まいったな」
日差しが暑い。
「あっちぃ!死んじまうぜ!」
屋根の下で休むことにした。
そこにはすでに、女がいた。…まさかな。ははっ、そんな都合のいいこと、あるわけがない。
「てめぇ、マフィアか?」
んん?なんだ、この女は。こう言う聞き方するか、普通。
「だったらなんだ、レディー」