第3章 SSS キャラ×男主(―/7日更新)
★Aキャプテン・アメリカ
バイト先からずっと後をつけられている気がする。変質者が出現している噂は聞かないけど、背後から迫る殺気にも似た感覚は俺の勘違いなんかじゃないと思う。恋人に持たせられた護身用のスタンガンはあるけれど意味を成すだろうか。
(うぅ……)
トラフィックライトに引っ掛かって後ろを気にしつつ足を止める。車は一台も通ってないし、レッドマークなんか無視して渡ってしまおうか。恐怖心に負けて駆け出す体勢に入った時だった。
「こら、」
「んんっ」
暗闇から腕が伸びてきて後ろから包み込む様にぎゅっと抱き締められる。やんわりとだけど確かな力強さで口元を覆われて完全に拘束された。てっきり後をつけてきた変質者だと思って暴れようとしたけれど、耳の中に吹き込まれた低い声には聞き覚えがあった。スティーブさんだ。
「いくら車が来なくても赤で渡ったらダメだろ。危険はどこにあるか分からないんだから」
「んんぅ」
「ああ、喋られないか」
「ぷあ……ごめんなさい、でも、早く帰りたくて」
「なにかあるのか?」
「いま、誰かに後をつけられてる気がして、怖くて、だから……」
「そうか」
スティーブさんがキャプテン・アメリカであることは彼のファンであれば誰もが知っている。彼の正義感の強さも。だからだろうか変質者の気配がいつの間にか消えていた。キャプテンに恐れを為して逃げ出したに違いない。
家まで送るよと街灯の光を背負いながら囁いてくれる彼を見上げると安心感が募った。お礼を兼ねてハグを返すと、彼の手がそっと腰を撫でた。
→