第3章 初訪問
Side T
初めて会ったとき、可愛いやつだなと思ったけど、それ以上の気持ちはなかった。共演が増えていくうちに、可愛い笑顔の裏で、すごく悩んで頑張っていることがわかり、あいつを支えてやりたいと思うようになった。
あの日*の体調があまり良くないのは、挨拶した顔を見てすぐに分かったけど、頑張り屋のあいつの邪魔をしたくないから見守ろうと思って特に何も言わなかった。
休憩の時、もしかしたら俺には頼ってくれるんじゃねぇかと思って、声をかけたんだけどダメだった。
あとは帰りしかねぇなと思って、これでも断られたらあいつのこと思うのは諦めようと思ってた。
なんとか家まで送るってとこまでこぎつけたんだけど、電車にこのまま乗るのも厳しかったから、あいつの家まで送るのをやめて、一か八か自分の家に連れてった。
でなんだかんだ、両想いだと分かって、俺たちは恋人になった。好きな人がいるって聞いた時はほんとまじで死にそうだったけど、無事に付き合うことが出来て本当によかった。
あの日はもういっそ襲ってしまいたいくらいだったけど、さすがに体調悪いやつを襲うほど、ダメな男ではない。と思う。
でも、キスして蕩けたこいつの顔見たときは、ほんとに危なかった。あの日の俺、まじで頑張った。となりにいる状態でよく寝たぞ!
そんなずっと好きだった*の家に今日は行くことになった。今日もご飯を作ってくれるんだって。
今日行くことは、昨日の夜のメールで決まった。
『たつくん、おつかれさまです。明日の夜、もしよければ私の家に来ませんか?さっき、明日の夜用にビーフシチューを作ったのですが、作り過ぎてしまって…』
そんな嬉しいお誘い断るわけなくね!?しかも、*の家に呼ばれるのは初めてだ。
そんなわけで俺は朝からわくわくなのである。
帰りに駅で待ち合わせすることになっている。
『おつかれさま。終わったから駅に向かうわ』
『わかりました!!多分先に着くので待ってますね。』
駅に着き、改札を出る前に*を見つけた俺は、つい駆け足になっていた。
「おつかれ!遅くなってごめんな!」
「いえ!私も今着いたところなので!じゃあ行きましょ!」
「おう!あ、手、出して?」
「え?」
手を繋ぐと*は、少し照れた顔でにこっとした。
やばまじで可愛い。