第9章 交差するそれぞれの思い《回想》
ミツバは未来の決めた意思に水を差すような話はしたくなかったが、未来を心配して思い切って聞いてみた
「銀色の髪をしたあのお友達と離れ離れになっても…平気?」
「あれ、どうして銀ちゃんのこと知ってるの?」
思いがけない人物のことが話題に上がり、未来はキョトンとした
「あの頃、その子のこと聞かせてくれたから。銀色の髪をした子とお友達になったって、未来ちゃんすごく嬉しそうに話してくれたから、なんだか覚えてて」
「そんな昔のこと…。でも嬉しい、そんなことまで覚えててくれて」
銀時のことをそんなに嬉しそうに話していたのかと思い、恥ずかしそうに未来は微笑む
「銀ちゃんとはあれからずっと一緒だったんだ。楽しい時もそうじゃない時も、いつもそばにいてくれた…。銀ちゃんと離れるなんて考えたこともなかった」
「未来ちゃん…」
遠くで光る星を見上げる未来の横顔からは、なんの感情も読めない
「私ね、いつも置いていかれる側だったの。父も母も、大切な人たちはみんな私を置いて遠くにいってしまう…。置いていかれる気持ちはよく分かってるつもりだから、私はそんなことしたくなかった」
「………」
「それなのに、大切でしかたない人を地球に残して私は宇宙へ行く…。酷いよね。そんな今なら分かる気がするの、残していってしまう人たちの気持ちが…」
いつの間にか未来の瞳に涙が溢れていて、目尻から流れ落ちた
「元気で生きてくれているなら…、それだけでいい」
「未来ちゃん…」
「私のことを忘れてもいいから、楽しく幸せでいてくれたら良いって…。私の帰りを待ってて欲しいなんて、本当に大切な人にはそんな自分勝手なことは言えないよ」
未来の言葉にミツバはふと思い出した
あの人もそう思ってくれていたのだろうか…
その真意を知る術はもう何もないけど、もしそうなら良いなと、未来の言葉に昔の自分が救われた気持ちになった
それからしばらくして、未来は宇宙へ旅立った