第6章 食事
瀞霊廷内に人が溢れにぎやかな昼休み。玄関口へ続く廊下で萌は恋次に愚痴られていた。
「何なんだよあの人ぉ!怖えよお…!」
瞳を潤ませて必死に訴えてくるその姿はまるで大型わんこ…
「話し掛けてもシカトなんだよ、オレ仕事の話してんのに!」
「わぁっ…もう、落ち着いて」
がばっと両肩を掴まれて足元をふらつかせつつも、萌はどうにか恋次をなだめる。
恋次の言うあの人とは勿論、朽木隊長のことである。六番隊に配属され副隊長になったばかりの恋次は、隊長とうまくいっていないらしい。
道行く隊士が見て見ぬふりをして通過していくなか、こちらに声が掛けられた。
「…何やってんの?」
通りすがった修兵がやや呆れた顔でこちらを見ている。
「檜佐木副隊長…!」
「よ、萌ちゃん」
久しぶりに姿を見て咄嗟に呼んでしまうと、修兵も微笑んで軽く挨拶し返してくれた。
名前呼ばれたの、初めて…
そんな気恥ずかしい空気の中に恋次が割って入った。
「檜佐木さん…あの人何なんすかねまじで!」
「あぁ?」
眉根を寄せて恋次を見やった修兵は、取り乱した様子の彼をスルーし何事もなかったかのように提案した。
「お前らもメシまだなら行かねえ?そこの蕎麦屋だけど」
丁度昼時で修兵は昼食を摂りに来たのだろう。勿論萌もそうだったので、急な展開にあたふたしながらも恋次を促した。
「そりゃ最初はお互いのことよく知らねえんだから、うまくいかない時もあんだろ」
店に入り蕎麦がくる頃には、騒ぎ疲れて肩を落とした恋次に修兵の説教が始まっていた。
「特に隊長格ともなれば、一癖も二癖もある強者揃いだ。ハナからてめえの意見なんざ通りゃしねえ。こっちから歩み寄るしかねーんだよ」
修兵のもっともな意見に萌も頷いて同意した。
「オレだって歩み寄ってるつもりなんスけど…」
「まだ就任したばかりだし、あんまり焦らないで。真面目にやってる人を認めない隊長なんていないと思うよ」
横で力無く呟く恋次に励ますように声を掛ける。
らしくないな…この間の一件から。
「それとも、甘えてるだけ?」
前回を思い出し冗談めかして聞いてみる。すると修兵が素早く反応した。