第5章 契約と思惑
「天月さん、お願い明日フェンさんと2人っきりなんて無理。だからついて来て」
「ええいいじゃん。何か間違いが起きてもイケメンだから許せるんじゃない?ほら、ブスだったら自殺もんだけど」
そう小馬鹿に笑う。
「じゃあ天月さんは許せるの?」
「いや、殺す」
葵はほらみろと言うように反目で見つめた。
「発言することとやることが矛盾してる」
じとりとした目で天月を見る葵。
「ウチのことはいいんだよ。別にいいんだよ?付いていかなくても。ほんと馬鹿だよね、よりによってフェンに付いて行って契約するなんてさあ。お前英語全部読めてないでしょ。何があっても何をされたとしても、文句言えない立場なんだよ」
彼女は反論できずに黙り込んでいる。
「お前は考えが甘いんだよ。他人のことなんて信じるな。100%嘘だと思え」
「そんなの」
「……」
「そんなの酷すぎるよ」
「酷い酷くないは問題じゃない。これは自己防衛だ」
「わ、わかった」
「安心して明日はちゃんとフェンを見張っとくから」
そう言うと彼女は嬉しそうに笑う。
「うん。ありがとう天月さん」
「さすがは天月様です。ボクちゃんとわかってました、天月様は優しいって」
葵の使い魔のルルが声を上げる。
「……別に」
「にやあー」
ルルはすりすりと顔を寄せる。
「お、おい」
「ルルも天月さんのこと大好きだもんね」
「はい。ボク天月様のこと、ご主人様と同じぐらい大好きです」
自信満々に言い切るルルに小さく微笑んだ。
「そう」
天月が一旦部屋を退室している時、ルルが不安そうに葵に口を開く。
「あのご主人様」
「ん?どうしたのルル」
「ボク天月様にお会いした時から、ずっと気になっていたんですけど……」
「…うん」
「どこかで会ったような気がして……」
「えっルルも?」
「え、もしかして……ご主人様もですか?」
「うん。なんかどっかで引っかかってて……私一体どこで会ったんだろう?」
「にゃん。思い出せないとなんだか気持ちが悪いです」
「何が気持ち悪いって?」
突如開いたドアから顔を覗かせる。
「べべべべべつに」
「なななんでもないですよ」
慌てたように答える1人と一匹を呆れ顔で見つめる。
「いや、同様しすぎだし」