第4章 教え
「寝る訳ねえだろ。後、ベビちゃんって何」
「だってベビちゃんが、あんまり無力で可愛くて可哀相だから」
「面白いですね。でも本当に哀れで無力なのは貴方なんじゃないですか?」
「…………え?」
言ってやったと思いながら不適に笑う。
玄関口まで来て後ろを振り返ると、呆然と立たずむフェンを見る。
「さっさと戻ったらどうですか」
ウチはフェンの返事を待たずに寮の中へ入って行った。
廊下を歩くフェンに話しかけたのはトアだった。
「おい、さっさと部屋に戻れ」
どこか呆れ気味なトアをじっと見つめるフェンは、元気がないように見えた。
「……なんだ」
「いや、なんでもない。お休みトアくん」
「……っ」
急に響いた大声は私が中庭に踏み入った時のことだった。どこか遠くでボールのようなものが弾むような音が聞こえる。
急に目の前が真っ暗になり、呆然になりながら両手の平を胸の前まで掲げる。だんだん光を取り戻す司会と共に、顔が空に向き体が地面に吸い込まれる。鋭い痛みと滝のように流れ落ちる涙にとまどいながら笑いが止まらない。
「天月さん、大丈夫ですか!?」
必死に呼びかける声が近づいてきて、駆けつけてきたことがわかる。
私は流れる涙と笑いを抑えられずロイに答えた。
「だ、ははは。大丈夫……ははは」
「今すぐ医務室へ行きましょう。みなさんすみません、サッカーはまた後でやりましょう」
凍りで顔を冷やしていると、ロイは私の目の前で頭を下げた。
「本当に申し訳ありません」
「あはは。もう大丈夫です。もう大丈夫ですので……まあ痛かったですけど。それにこれ2回目なので」
「え……?」
もう説明するのもめんどくさいというか、恥ずかしいので忘れたい。