第1章 拝啓赤き月へ
「大丈夫だよ、君のような子はすぐ可愛がられるから。安心しなよ」
「え、それってどう言う意味?」
天月ちゃんの顔を伺い見るが、何を思っているのかよくわからない。
それに一度も天月は葵の目を見ていない。
警戒しているのか、ただたんに興味がないだけなのか。
これが、侍ゆえなのだろうか?
………それが何故か悲しく思えて仕方がない。
ふとさっきまでの光景を思い浮かべる。
天月ちゃんを呼びに行こうと廊下に出て階段へ向かうと、階段の一段目に座る彼女がいて驚く。
「え、もしかしてずっと待ってたの!」
視線をこちらに向けて坦々と言いのける。
「部屋の場所わからなくなった」
「えー、ずっとそこにいたの、一緒にご飯食べればよかったのに」
「いらない」
「お腹すいてないの」
「いらない」
「そ…そう」
考え込んでいたせいか壁にぶつかる。
「あ、ぼーっとしてると、ぶつかるよ」
「って、それもう少し早めに言ってよー!」
「ぼーっとしてるとぶつかるよ」
さっきより言葉を早める。
「違う違う。早く言っての意味違うから! ふっははは。天月ちゃん面白い」
「は、意味わかんない」