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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第5章 ビターチョコレート




side 黒尾鉄朗


さっきまで電話越しに聞こえていた鈴のような声の変わりに聞こえてくる機械音。
から東京に行くと聞いた時に、覚悟はしていた。
自分達が側にいられない変わりに、きっと誰かがの隣に立つのだろうと。仕方の無い事だと。

それが、こんな気持ちになるなんて。

「ッチ」

割り切ることなんてとても出来ない。
の隣にあるのは常に自分でありたいと、胸を覆い尽くすこの感情は紛れもなく嫉妬心と独占欲だ。

の容姿も、鈴のような声も、純粋な優しさも。
人を惹きつけるには十分過ぎた。
に向けられる男達のあの下卑た笑みも、向けられる女達の羨望の眼差しも。全部遮ってきた。
自分の胸の中に囲うように。全て触れさせず。


その結果がこれだ。
は自分の魅力に気づいていない。
本当はそれでも良かった。俺も研磨も側にいた。
でも今は?
に向けられる視線を想像するだけで吐き気がする。


こんなにも、側にいられない事がツラい。


が東京にいた頃は、たった2つ、されど2つの年の差がもどかしかった。俺たちの間の2つの差は、思った以上に大きかった。どんどんと大人に近づく自分と、まだ幼い。
それも、歳を経ていく毎にもどかしさも無くなっていくと思っていた。ようやく同じ高校生だと安堵した所に、の東京行きが決まった。
頭をガツンと殴られたような。そんな衝撃だった。
物理的な距離というものは、たった2つの年の差なんて霞むぐらいしんどいものだった。


側にいられない。守ってやれない。
が1人で寂しいと思う夜も、一緒にいてやれない。
泣き虫なの涙を拭ってやれない。抱き上げてやれない。
触れられないということがツラい。


会いたい。


このまま考えていると、嫉妬でどうにかなりそうだ。
グルグルと頭を回る嫌な考えを振り切るように頭をグシャグシャにして、首を振った。
それでも胸もモヤモヤもざわつきも消えない。


「はぁーーーー。」


大きなため息をついて、久しぶりにランニングに出ることにした。
外はまだ少し寒い。この熱くなった心も少しは冷えるだろうか。


ジャージに着替えて外にでる。
とにかく今は無心になりたかった。



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