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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第18章 電話越しの梟





ふぅ、と息を吐いて紅茶を一口、そしてまた作業を開始する。
チクタクと時計の針が時を刻む音が、私の布を縫う手元と何となくリンクして、それが何だか楽しくなって一気に縫い進める。






そういえば、今日の部活の最中のこと。
部室を綺麗にしようと、潔子先輩と掃除をしていた時、棚の奥から出てきた大きな応援幕。
2人で顔を見合わせて、何て素敵な物が出てきたんだろうと喜んだ。
何年前に使っていたのかは分からないけれど、黒の布に白い文字で”飛べ”と書かれたその応援幕は、所々に汚れと解れは見られたけれど綺麗にして直せば充分に綺麗に使えそうだった。
それに”飛べ”だなんて、今の烏野にピッタリなのではないかと思う。


ふと、目の前を掠めてふわりと飛ぶオレンジ髪の日向くんの姿が目に浮かぶ。きっと日向くんは、烏野に無くてはならない存在になるだろうと、私の感が告げていた。宛てになるかどうかは、わからないけれど。



直せばインターハイ予選でも使えそうですね、と声を掛けた私に、潔子先輩は、私もアイツらに何かしてあげたいから、私に任せて、と、そう言ってその応援幕をぎゅっと胸に抱きしめた。窓から差し込む光が潔子先輩に反射して、何て綺麗なんだろうと息を呑んだ。
私には私のやるべき事があるように、潔子先輩にもあるのだと、そう思った。






『痛っ。』






また刺しちゃった。


プクリと赤い粒が指の先に出来ている。
またタオルで拭き取って絆創膏を貼る。これで今日2つめの絆創膏だ。やっぱり今日は余所事ばかり考えてしまってダメだ。
こんな風に手を絆創膏だらけにしてしまったら、明日目敏い蛍に見つかって問い詰められてしまう。
やっぱりなるべく皆には知られずに、所謂ドッキリ!という形にしたい。
こういう集中出来ない時はたまにある。そんな時はもう諦めて、集中出来る時に一気に進めた方がいいと自分の経験上分かっている。
糸がついたままの針を針山に指して、テーブルの脇に全部纏めてよける。
マグカップの中身を全部飲みほせば、もう大分とぬるくなっていた。


時間はまだまだ早い。
手近にあった大きなモコモコのクッションを抱きしめて顔を埋めて息を吐き出す。
クッションを顔に埋めたまま、私はすぐ側のベッドへと倒れ込んだ。
今から何をしようかな。










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