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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第14章 ベンチに座るということ




そして何よりも彼女は、私と違ってきちんと最初からこのバレー部の当事者だった。


自分が、何となく冷めた性格をしているのは理解している。
それは中学時代、陸上部でした苦い思いを引きずって、頑張って練習を重ねたって、突然やってくる終わりは余りにもあっけないものなのだと、そんな冷えきった思いから来ているのもわかっている。

そしてそれを、確かに今も引きずっているということも。


でも、彼女は違った。


ちゃんは、こうしてサポートをしていてもどこか他人事のようだった私とは全然違う。
いつか、彼女が隣でぽそりと漏らしていた言葉を思い出す。


『努力さえしたら、必ず報われるってわかっているなら皆やると思うんです。でも、報われないかもしれないって思っても、それでも同じ気力で努力の出来る人が、才能のある凄い人なんじゃないかなって思うんです。だって、同じ気力を継続するって、凄く大変なことなんじゃないかなぁって思うから。私はそれを応援したいんです。』


ちゃんは最初から、皆のことを信じてる。終わりの事なんて考えない、皆は才能のある人達だって信じてる。
そんなの、馬鹿らしいって思うかもしれない。ただの盲信だって。
でもきっと、それを信じて全力で応援する彼女だからこそ皆救われている。

もしも、こんな子が中学時代の私の側にいたなら今の私は何か違っていただろうかと、ありもしないことを考えては首を振る。
私には出来なかったことだった。努力を継続し続けるということは。信じてくれる人もいなかった。自分自身も信じていなかった。
それを、今更後悔している訳じゃない。


でも、彼らは。
こうして、信じてくれるちゃんがいる。
きちんと言葉にして、伝えてくれる優しい彼女がいる。
間違えないで欲しい、私みたいに。諦めないで欲しい、私みたいに。


モヤモヤと、ずっと考えていた私の耳に入ってきたスガの言葉。


「俺ら3年には”来年”がないです。だから、ひとつでも多く勝ちたいです。次へ進む切符が欲しいです。·····それを取ることが出来るのが俺より影山なら、迷わず影山を選ぶべきだと思います。”3年生なのに可哀想”って思われても、試合に出られるチャンスが増えるならなんでもいい。」


私の心に、その言葉がストンと落ちた。


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