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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第12章 Tシャツ裏事情




無表情の潔子先輩が、パサッという音を立ててTシャツの文字がこちらに見えるように翻した。
ショッキングピンクのそのTシャツに描かれていたのは、達筆な黒い文字で書かれた”清水潔子”の文字。
言葉を無くすとはこういう事か。何か言おうと考えはするけれどあれも違うこれも違うと声になる前に掻き消えていく。


「何でフルネームなの。」

潔子先輩の問いに西谷先輩と田中先輩がこの世の言葉では潔子先輩を表せない、表せるのは潔子先輩の名前だけだからと誇らしげに言っている。
背中にスっと冷たいものが流れるような感覚。絶対に潔子先輩は怒っている。

「あんた達、自分のばっかマトモに作って。」


潔子先輩を直視できずに、自分の手元にあるTシャツを凝視していると、ふと腕を掴まれて引き寄せられた。
気付いたら私は潔子先輩の腕の中に。

「ちゃん、嫌だったら着なくていいのよ。」

『へ?··え、あ···でも。』

潔子先輩に頭を撫でられる。

「私は全裸かこのTシャツの2択になった時以外は着ない。·····行こうちゃん。」

潔子先輩に手を引かれて、男子バレー部の部室を後にする。
後ろから全裸!?と西谷先輩と田中先輩の弾んだ声が聞こえた気がしたけど、聞かなかったことにして、大人しく潔子先輩の後についていく。


いつも潔子先輩は穏やかだけど、先輩も怒ったりするんだ。
静かに温度が下がっていくかのような氷点下の怒りを目の当たりにした私は、潔子先輩を怒らせないように気をつけようと、この日心に誓ったのだった。





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