第1章 【 千空×お酒のちから。】
千空と付き合って半年。いや、正確に言えば3700年と半年。
今じゃもはや付き合ってるというか、ほぼ科学者の助手のような存在。
それもそうだ。
こんな非常時の石化した世界で、恋愛している余裕なんてない。
千空に石化を解いてもらって、また会えただけで十分なはずなのに、時間が経つにつれてわたしの心は満たされなくなっている。
どうしようもない気持ちに嫌気が差し、はぁ……と溜め息を吐きながら満月が輝く夜空を見上げた。
「海来、どうした。暗い顔をしているな」
「コハク……」
見兼ねたコハクがわたしの隣に腰を落とした。
「千空のことか?」
「うっ…」
「やはりそうか、千空を見てる時の顔と同じだったぞ」
コハクが鋭いのか、わたしが分かりやすいのか……
よく見てくれてるって事なんだけどね。
「恋人なら、恋人らしくするのが当然だと思うが」
「でも千空の事だから軽く流しそうだよう……」
「そうか?千空は海来と男性陣が話しているところを見ると、めっぽう嫉妬しているようだぞ」
「えっ……」
自分でも、ぶわぁぁっと顔が熱くなるのがわかる。
「ふふ、海来も分かりやすいな、可愛い奴め!」
「も、もう!からかわないでよ~!!」
でも、わたしが千空を誘うなんて柄じゃない。むしろ恥ずかしくて死ねる勢いだ。
千空、いつか惚れ薬作ってくれなかいなぁ……
「ん?お前ら、何してんだー?」
うーん、うーんと考え事をしていると、わたし達に気づいたクロムが駆け寄ってきた。
手には大きな壺を抱えている。
「な、なんでもないよ!てゆうかクロム、それは何?」
「ん?あぁ、これは村から持ってきた酒だ!」
クロムが壺の蓋を開けると、ツンとしたアルコールの香りが広がった。