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夢の続き【アイナナ】

第13章 妖万華鏡の楽紡


結局かんざしは見つからないまま、朝がきた。
紡も、どことなくスッキリした顔で、門にたつ。
「形見はいつか必ず、届ける」
「はい。英さん、7日間ありがとうございました」
「ああ、じゃあ、今から記憶を消す」
「その前に、もう一つだけ…わがまま聞いてくれませんか」
「俺にできることなら」
「最後に接吻をして下さい」
「はっ!?っな、何を言って…」
「英さんのことを、好きになった記憶がなくなる前に…一つ報われなかった私の思いを、刹那だけでも成就させてください。」
「………わかった…」
そう言うと、英さんは顎を持ち上げ、優しい接吻をふらせた。
ぽろぽろと涙が流れ、英さんが好きな気持ちが溢れそうで、どうにかなりそうだった。

…………

気がつくと、おつかい途中の街に立ち尽くす自分がいた。
え…?私、おつかいの途中で……
なぜだかわからないけれど、泣いている。
なんだろう…?自分でも何故だかわからない。
けれど、不思議と胸がせつなかった。
しばらくして、母の形見をなくしたことに気づいた。


数年後ー…
コンコン、扉を叩く音がして、表にでる。
そこには、目に傷がある、険しい表情の長身の男性が立っていた。
「何か?」
「これを」
そう言うと、彼は数年前に失くした、形見のかんざしを差し出す。
「!っこ、これ、どこでっ!」
「ああ、そこで拾った」
そう言うと、優しく微笑む。
その笑顔、なぜだろう、凄く懐かしくて…胸の奥が刺激される。
じゃあ、と言って去ろうとする、彼の手を反射的に掴む。
「!」
「あの…な、なぜだか、あなたをみたら、気持ちが込み上げて、涙が溢れてしまって…自分でもよくわからないんですがっ」
彼は、何も言わず、ただ涙を指で拭う。
「…そうだな、とりあえず、らーめんでも食べにいかないか?娘」
ふっ、と笑顔をみせた。

ーーー
数ヶ月後
らーめん葛ノ葉

「英さん結婚するらしいよ」
「えええ!?ほんまかいなあ…誰と?」
らーめんを食べながら、重と詠が噂話をする。
それを聞いていた、九尾の狐がくくくっと笑う。
「そりゃ、相手は、一人しかいないだろうね?」
「「?」」
数日後、懐かしい娘が、英のもとに、嫁いだのだった。


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