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夢の続き【アイナナ】

第13章 妖万華鏡の楽紡


詰所で書類整理していると、背後から、頬をふわりとふさふさのしっぽで、ひとなでされる。

「なんのようだ」
書類整理の手を止めず、目もくれず英は答えた。
「おやおや、相変わらず、つれないね…せめて、こちらをみたらどうだい」
「用件を言え」
「お届けものだよ」
「何がだ」
そこで、九尾の狐を振り返り、見た。
隣に見慣れない娘。

「あの、ここは一体…?」
「!」
「迷いこんできた人間の娘を、連れてきてあげたんだけど?」
「そうならそうと早く言え!…ご苦労だった。」
「相変わらずだね…じゃあ、私はこれで。この借りは今度返してね、英」
そういうと、九尾の狐は、すぐに姿を消した。

「娘、名前はなんだ。今から元の世界におくりとどけるから、安心しろ」
「…紡です。も、元の世界…とは」
「おまえは、妖怪の世界に迷いこんだんだ。けれど、ここを出るときに記憶も消すから、安心して元の世界に…」
「…今すぐ帰るのは、こ、困ります」
「事情はわからんが、そういう決まりだ、今から…」
と、英がいいかけると、紡からぽろっと、涙がこぼれ落ちる。
「泣いても、だめだ」
そう言い、有無を言わさず紡の腕を掴み、進みはじめた。

「少しだけ…時間を下さい。母の形見のかんざしをこちらの世界で落としたんです、7日!7日で必ず見つけます!」
「!」
「お願いします…」
はらはらと、紡の涙は流れた。
「…おふくろさん、亡くしたのか?」
「はい、子供の時に。あのかんざしは、私にとって、母のかわりなんです」
「………7日だけ、だぞ」
そう言うと、英は紡の腕を解放した。
「あ、ありがとうございます!」
さっきまで、泣いてた顔に、一気に笑顔の花が咲く。
「…ただし、この街は危ない。その探しもの、俺も同行する。」
「は、はい!よろしくお願いします」
「みつかるといいな、おふくろさんの形見」
英は優しく微笑んだ。
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