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【FHQ】勇者の物語

第4章 来客


「ダイチ……おまえ……なにして……」

スガワラさんは震える声を絞り出す。
俺は赤から目が離せない。
アオネさんはやっぱり平然と座っている。

サワムラさんは呼吸を整えて、まだ殺気を見せる。

すると、カゲヤマがむくりと起き上がり、ナイフを眼球ごと抜く。

眼球の刺さったナイフを床に捨て、カゲヤマはサワムラさんに赤い両目を向けた。

……目が治ってる。
そして、本来の色を見せる。

2人がまた駆け出そうと足を引いた時、

「やめてくださいい!!」

甲高い悲鳴のような制止の声が、厨房から聞こえてきた。
ヤチさんだ。
大粒の涙を流しながら、よろよろと2人の間に入る。膝が大笑いしてる。両手を広げて、涙声で叫ぶ。

「ケンカ、しないで、ください……!……まだ、まだやるなら……私を倒してからにしてください!!」

サワムラさんから殺気が消えた。
けど、カゲヤマは違った。

「わかった。じゃあ死ね」

カゲヤマは駆け出して、俺も駆け出した。
サワムラさんはヤチさんを抱え、俺はカゲヤマに頭突きした。

2人でテーブルに乗り上げ、分かれて床に落ちた。

「いっでぇ……」
「ヒナタ!なにしてんだ!」

俺の元へスガワラさんが駆け寄ってくる。

アオネさんは一体どこから持ってきたのか、ロープを使ってカゲヤマを拘束してた。

「うぅ、ぐすっ」
「やっちゃん、ごめん。怖かったな」

ヤチさんはサワムラさんに抱きついてしゃくりあげる。



閑話休題。



「カゲヤマ。話す気になったか」

椅子に縛り付けられたカゲヤマが口を噤んでから、かれこれ1時間が経とうとしていた。
そろそろ外が静かになってきた。

スガワラさんは小さく溜息を吐いて、カゲヤマの前に立つ。

「じゃあ、俺の質問に答えてくれるか?」

カゲヤマは無反応だ。
スガワラさんは気にせずに続ける。

「うーん。聞きたいことが山ほどあるが、まずはこれだな。いつどこでダイチと知り合った?」

カゲヤマはすぐに答えた。

「10年前、王都で」



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