第7章 両手に花
「せんせー、ティッシュ貰っていーい……?オレのべっとべと」
「いいですよー」
永夢くんがデスク上の箱ティッシュから数枚引き抜いた。
身支度をしてわたしの隣に座る。
永夢くんは人懐っこい笑みを浮かべ、わたしを見つめる。
わたしも見つめ返し、
「ちょっと……待って、ください」
廊下に面した保険室のドアに向かって声をかけた。
「ねえ、どうしてずっと聞き耳立ててるんですか?」
永夢くんが目を見張る。
慌てて飛び起きた。
「え、誰ッ?うわヤバ、せん」
わたしはゆっくりと腰を上げる。
「……せ?」
ドアを開き、
「…………」
「どうして帰らなかったんですか?」
俯いている聖くんに声をかけた。
「聖ちん……」
唖然としている永夢くんを振り返る。
「混ぜてあげてもいいですか?」
永夢くんは静かに頷く。
「うん……、せんせーがそれがいいなら、オレはいーよ」
「ふふ、聞き分けがいいですね」
永夢くんは少しだけ寂しそうに笑い、もう一度頷いた。
「勝手に話を進めるな!なんで僕がお前なんかとっ!お前みたいな三下の養護教諭なんかに、僕が……」
わたしのこめかみがぴくんと脈打つ。
「この、僕……が」