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また、恋してくれますか。

第1章 〜幸せだった?〜


家康の不安は、現実となってしまった。

熱が一向に下がらないまま
信康のその小さい身体の
体力は限界に達した。

父と母の懸命な看病の甲斐もなく
信康は、その短い生涯を閉じた。

信康、享年五歳。

愛し合う二人の一粒種の信康を
失った悲しみは、あまりにも深かった。

失意の中、しめやかに行われた通夜で
憔悴しきった姿になりながら
家康も桜奈も気丈に振る舞った。

それが、返って悲しみの深さを
物語った。

参列した、武将達はかける言葉を
見つけられないまま、家康の肩を
ぽんと叩き、哀悼の意を表して
一様に悲痛な表情を浮かべた。

武将達にとっても
困難を乗り越えて結ばれた
家康と桜奈には

誰よりも幸せになってもらいたい
二人でもあった。

戦で、両親も故郷も記憶まで失った桜奈と
幼い頃から、人質として辛酸を嘗め
傷つきながら育った家康。

許嫁でありながら、戦によって
引き裂かれ心を閉ざした二人が

それでも、お互いに惹かれあい
お互いを唯一の存在とし求め合い
やっと結ばれた経緯を見守って
きたからだ。

それだけに、信康の死によって
この夫婦を襲った
悲しみの深さを思うと
居た堪れなかったのだ。

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