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また、恋してくれますか。

第9章 〜秘密〜


登り坂の向こうの夕日を背にした桜奈の
表情は逆光と重なり、眩しくて家康にはよく
見えていなかった。

ただ、風に揺れる髪と立ち尽くすように
微動だにしない、桜奈のシルエットが
家康には美しく見えた。

皮肉な事に、婚約者の存在を暴露して
やっと、自分が桜奈に抱いていた
感情が何だったのかが、腑に落ちた。

(ああ、そうか、やっぱり俺は、あの日
一目見て好きになってしまってたんだ・・・

はは、今日の俺はやっぱり、どうかしてる
今更、どうにもなんないのに
なんで今になって気づくんだよ・・

今更なのに・・曖昧な気持ちのまま
気づかないふりしてた方が忘れられたかも
知れないのに・・・
全部、とっくに手遅れなのにさ!
なんで、今なんだよ・・・)
自分に対する苛立ちを感じながらも
桜奈への想いを必死で
封印しようとする家康。

(これが叶わない想いだって知って
胸が潰れそうなくらい痛い。
この痛みで自分がどんだけ好きになってたか
また、思い知らされるって・・
やっぱ、きっついなー)

自分の胸ぐらを掴み空を仰いだ。
鮮やかな茜色と夜が混在する
空の色が目に染みるようで
涙が出そうだった。

そして、視線を桜奈に戻した
家康は、目を見開き驚いた。

桜奈の瞳から零れ落ちる涙が
ポタポタとアスファルトに雨のように
落ちていった。

(えっ?なんで、あんたが泣いてんの?)

『ど、どうして泣いてんの?』と慌てる家康。
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