第2章 思い出
また、いつもと変わらない朝が来た。
カーテンの隙間から差し込む光が僕を照らした。
カーテンを勢いよく開ける。
そこから見える丘は、いつもと変わらぬ静けさを保っていた。
僕の父は変わり者だった。
街から離れた人気のないこの丘に一目置き、ここに家を建てた。
そのせいで、母の買い物や僕の通学は想像以上に過酷なものとなった。
街まで片道1時間近くかかり、朝起きるのも家を出るのもクラスの誰より早い。
『でもまぁ、父さんが決めたんだからしょうがない。』
そんな思いを胸に、僕は歩みを続けた。
ふと、壁の隅に飾られた写真に目をやる。
家族3人が並んだ写真。
「おはよう。」
当然、返事は返ってこない。
でも、これが僕の日課だ。
『一瞬たりとも忘れたくない。』
そんな気持ちがそうさせているのだろう。