第8章 しけた面してんじゃねーよ
第3Qになって火神くんのジャンプ力は、誰が見ても分かるほどに高くなっていた。
そしてついにその時はきた。
真ちゃんが3本目の3Pを打ったとき、火神くんがボールをたたき落とすようにブロックしたのだ。
真ちゃんのシュートを止めることができるのは、キセキの世代だけそう思っていただけに、正直私は動揺した。
火神くんはキセキの世代と渡り合える力を持っている、既にそう認めざるを得ない状況になっていた。
『真ちゃん・・・・・、』
不安から思わず名前を呼んでしまった。
・・・・・不安?
4月から見てきて不安になった試合はあっただろうか、いやなかった。
それ程に真ちゃんは人一倍練習していたし、秀徳の厳しい練習だって目の前で見てきた。
それなのにこの不安はどこから来るのだろうか。
火神くんはそれ程まで強いのだろうか。
結局第3Q前半は、火神くんが1人で秀徳を圧倒していたが、後半からはその彼のガス欠が響いたのか61-47で依然秀徳リードのまま終了した。
インターバル中、難しそうな顔をしていた真ちゃんを私は見逃さなかった。そして私の不安そうな顔に気付いたのは高尾だった。
「オイオイオイオイ、しけた面してんじゃねーよ。」
『・・・ごめん。』
「こっちには真ちゃんいんだぜ?」
無敵じゃね?と高尾は楽しそうに笑っていた。
『高尾、楽しそうだね。』
「は?すげぇ楽しいに決まってんじゃん!」
苦しいけどな、と高尾は付け足した。
私は、高尾に真ちゃんの足りないものを見つけた気がした。
そして泣いても笑っても最後の10分間が始まろうとしていた。
(「さっきも言ったけど、」)
(『ん?』)
(「オマエは大人しく待ってな。」)