第5章 オマエに惚れてんだからな
「あ?もう1回言ってみろ?」
「スタートから出させて下さい。」
「オマエさっき、占いが悪いから出たくねーって言ってなかったか?」
『言いました、すいません!』
全く、とキャプテンは大きなため息を吐いた。
「旧友に会ってテンション上がっちゃったんだろ?」
「いつまでも的外れな勘ぐりはよせ。シュートタッチを確かめたくなっただけだ。」
「いいけど、監督から許されてるオマエのワガママは1日3回までだからな。あと2回言ったらキレっから。」
『すいません、ありがとうございます!』
キャプテンに再び頭を下げると、離れたところから宮地さんの呆れた声が聞こえてきた。
「大変だねぇ、緑間みたいな幼なじみ持つと。」
「まぁいつも通りシュート決めりゃあ文句はねぇが、占いが悪いなんてクソの言い訳にもなんねぇからな!」
「落ちるわけがない。今日のラッキーアイテム、クマのぬいぐるみで運気も補正されているのだから。」
しかし実際問題、フォームを崩されない限り、真ちゃんのシュートは外れない。そしてきっとそのフォームを崩すことのできる相手はキセキのみんなくらいだ。
だから先輩も先生も真ちゃんには強く言わないのだ。
真ちゃんと高尾にハイタッチをして試合へ送り出す。いつの間にかあたりまえになったこの瞬間が私は大好きだ。
そしてこの試合、結局真ちゃんは1本もシュートを外すことなく、秀徳を勝利へと導いた。
「まだボール空中にあんのに、真ちゃんにディフェンスしろって言われたときは正直ヒヤヒヤしたぜ?」
「バカを言うな高尾。オレは運命に従っている。そして人事を尽くした。だからオレのシュートは落ちん!」
真ちゃんは満足気に鼻で笑った。