第6章 確証
目の前に、涙で顔を汚した
勝瀬さんがいる。
蒲田さんと二人、彼女に抑制剤の薬を
打って介抱した。
発情期のサイクルは、まだまだ
先だったらしい。
そのまま眠ってしまった彼女を
病院へ連れていくために、
色々と前準備が必要だった。
なんと言っても、
岸くんのヒートに当てられて
誘発されたんだと、蒲田さんは言った。
「……まさか、岸くんがこれほど
強いアルファ性だったなんて」
オメガの匂いにアルファが
当てられてしまう話はよく聞く。
オメガの社会的地位、
性質上アルファを求める性なので
匂いは特に強く産まれてくる。
———けど、今回は逆。
初めての岸くんのヒートは、
フェロモンが強すぎるあまりに
オメガを誘惑する匂いになったのだと。
その気になれば、オメガの発情期
サイクルを狂わせてしまえる。
恐ろしい事実に、俺は少し不安になった。