第5章 溺愛執事の逆襲
『お食事、ですか』
『昔からの友人でね。秘書を連れていくとどうも固くなってしまって。付き合ってくれるとありがたいのだが』
『僕でよろしければ喜んで』
旦那さまにはたくさんご恩がある。
昔からの友人に会うだけでもたった一人で外出、とゆーのが身分的に困難であるなら。
喜んでその役目、引き受けるつもりだった。
もちろん気ががりはあったのだけど。
仕事だから。
そんな大義名分に、あぐらを掻きすぎてしまったのかもしれない。
彼女の気持ちなど、汲んでなどやれていなかったのだ。
『皇が部屋にこもったきり出てこないらしいんだ』
旦那さまから伝えられたのは、だいぶお酒も飲んで、そろそろお開きにしようとする、そんな時だった。
『メイドから今しがた連絡もらってね。すまんがハイセ』
『ええ、申し訳ありませんが、自分はこれで失礼させていただきます』
『悪いね、いつもあの子のわがままに付き合わせてしまって』
『………好きでやっていることですから』
『そうか。外に回してある車使いなさい。待機させているから。』
逸る気持ちを抑え、車に乗り込んだ。
11時。
もうきっと、寝てしまっただろうか。
そんなことを考えながら屋敷へと着くと、ロビーにはまだメイドが残っていて。
「旦那さまからご連絡いただきました。せっかくのご会食、邪魔して申し訳ありません」
「大丈夫ですよ。それよりこんな時間までありがとう。あとは大丈夫だから」
「失礼します」
そのまま彼女を帰し、皇の部屋へと足を運ぶけど。
そこに彼女の姿はなくて。
「…--…」
もしかして。
ここにいないなら、彼女がいる場所はひとつしかない。
足早に自室へと向かい、ドアノブに手をかけた。
瞬間。
「………っ」
聞こえたのは、小さくくぐもった吐息と、粗い息遣い、で。
瞬時にドアの向こうの状況が理解出来た。