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溺愛執事の恋愛事情

第11章 執事、引退





あれから。
一週間。
警察の事情聴取とやらに呼ばれること、数回。
目撃証言もあの男の友人とあって、信憑性にかけると、俺への容疑はほぼ晴れた。


だけど案の定、俺の素性が知れるのにさほど時間などかからず。
『財閥子息の裏の顔』
なんてアホらしい見出しの週刊誌が、俺の過去やらなにやら、適当放題書き立てた。
抗議するだけ向こうの思うツボ。
無視を決め込むことにした。
和泉家も、俺はもう縁を切ったものとして取材を全てシャットアウトし、会社やグループにまで火の粉が降りかからないよう根回しは早かった。
このまま、騒ぎはおさまるかもしれない。
わざわざこの地を去らなくても。
なんて思惑が頭をよぎるくらいには、すぐに世間の注目は冷めていって。
西園寺グループまで、マスコミの目が向くことはなかった。
だけど。

「あなたはもう、いらないわ」

頭から、あの言葉が離れない。
未練がましくしがみついていても、仕方ないというのに。



せめて俺に出来ることは。
彼女をそっとしておくこと。
この話題が西園寺にまで及ばないよう。
まかり間違って、あの事件が表に出ることのないように。
旦那様だって、それを一番恐れて俺をロンドンへ行かせる道を選んだわけだから。
皮肉なもので。
本来ならばたぶんロンドンへは副社長が行くはずだった。
俺はあの話は断るつもりでいたし。
辞退も、話が出た時にはっきりと申し出た。
あんな事件を息子が起こさなければ。
自ずと欲しいものは手中にあったのに。
ほんと、うまくいかないな。
人生ってやつは。





「……すまないね、ハイセには、辛い選択をさせてしまったね」
「いいえ。ロンドン支社を任せて頂けるなんてこんな光栄なお話、感謝しか」
「ハイセ、数年で結果を出すんだ。お前を、娘にふさわしい男だと私に認めさせてくれ、いいね?」

「…………はい」




パタンと、旦那様の書斎をしめ玄関ロビーへ。



「………ハイセ」



旦那様にこの時間に屋敷への呼び出しがあったときからこんな予感はしてた。
だって今は、下校時刻。
彼女に会うのは、偶然なわけがない。


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