• テキストサイズ

溺愛執事の恋愛事情

第9章 ふたりの境界線






痛い……。
頭、痛い。
気持ち悪い。
頭割れそうに痛いし、胃が焼けるように吐き気がする。



『………』




なに。
だれ。
顔が、見えない。
声が聞こえない。
でも。
なんだろう、すごく嫌。
ここは、怖い。
嫌だ。
ここにいてはいけない気がする。



━━━━━ハイセ。



そうだ。
ハイセは?
ハイセはどこ?




「………せ」



ハイセは?





「ハイセっ!!」









…………あ、れ?




「うなされていましたが、ご気分でも?」



ここ。
あたしの、部屋。
窓の外、真っ暗、ってことは夜中か。
ベッド脇に用意された椅子。
心配そうにベッドに身を乗り出すハイセは、まだ燕尾服。


「………ずっといたの?」


「怖い夢でも見ましたか?」
「夢………」



夢。
そうか。
そーいえば。
頭痛も吐き気も、なくなってる。




「……ごめんね、ハイセ」



ずっとついてて、くれたんだ。



「落ち着きました?」
「ええ」



優しい、ハイセの笑顔。
安心する。
あたしはいつもこーやって守られてばかりで。
いつもいつも、ハイセの負担になってる。
ちゃんと横にならないなら、疲れなんてとれるはずもないのに。
だけど。
わかってるけど。
そばにいて欲しいって、望んでしまう。




「朝まで、いてくれる?」
「もちろんでございます」



横になるあたしの頭を撫でて。
ハイセが優しく笑う。



「………一緒に、寝ちゃ駄目?」


「………」



わかってる。
こんなときはハイセは執事、に徹するから。
たぶんきっと。
今のあたしは『お嬢様』で、ハイセは『執事』。
あたしの甘えはハイセを、困らせる。



「冗談よ、お休みなさい」
「はい、おやすみなさいませ」




恋人と執事の境界線。
線引きまで完璧なんだ。
少しくらい、あやふやなままでもいいはずなのに。
ハイセのバカ。






/ 197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp