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溺愛執事の恋愛事情

第9章 ふたりの境界線


「………さま」




怠い。
重い。
頭痛い。



「………お嬢様」




だれ。
ハイセの声じゃない。
まだ寝かせてよ。
ハイセじゃないなら、人の睡眠邪魔しないで。


「お嬢様」


「…………なに」



あまりのしつこさに、寝ぼけ眼で返事する。



「申し訳ございませんお嬢様。おはようございます」
「大丈夫よ、なんなの?」
「………和泉さま、いらしてませんでしょうか?」
「ハイセ?」



まだまだ眠い体を、目を擦りながらムクリと起こせば。

「!!」


掌に感じた暖かい温もり。
視線を掌に向けた、瞬間。
悪びれもなく隣で眠るハイセの姿。

思わず声を出しそうになった瞬間、タイミング良くパチリとそのキレイに整った漆黒の瞳を開けて。
『しー』とでも言うように人差し指は口元へと持っていかれた。


「お嬢様?」
「あ、ええそうね、まだ、来てないみたいだけど。」
「そうでしたか。申し訳ございません」
「……なんか、あったの?」
「和泉さまのお姿が見えないようでして。本日はわたくしが朝のご準備させて頂いてよろしいでしょうか」
「ぇ」
「入ってもよろしいでしょうか?」

「え」


いや、待って。
よろしくないよそれ、絶対。


「あ、だ、大丈夫!……ぃや、ちがくて!ひとりで、大丈夫!」
「お嬢様?」
「ハイセいなくても、大丈夫だから」


無理無理無理っ。
今開けられたら絶対無理っ。
絶対ダメなやつ、それ!!


「………かしこまりました」
「ぅん!!ありがとう」


だってだってだって。



あたしもハイセも。



『裸』、だもん!!



なんで?
あれ?
だいたい、ハイセが隣で寝てることすら初だし。
いつもならハイセ、ちゃんと、してくれて、る、はず。



「………笑ってるけど、いいの?時間」



ひとり百面相でもやってた気分になって。
ふと我にかえって隣を見れば。
案の定となりでは声を堪えて肩を震わせている男がひとり。


「いいわけないでしょう」


時計を見れば7時を回っている。
『いいわけ』は、ない時間だ。


「僕としたことが、寝過ごしてしまいました」


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