第5章 episode4
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彼女は力を持ちながら、いつも誰かの背に隠れて、手を引かれていた。
最初は―…まだ背が同じぐらいのころ、タツマキに。
メリィの通信端末が震え、部屋でアマイマスクによって命じられていた恐ろしい数の工程のスキンケアをこなし、パックに顔を浸していた彼女はLINEを見る。
―ねえメリィ、この間の件だけど。
―フブキちゃん、ごめんね、先輩が芸能プロダクション的にもダメだって。
―はあ、やっぱりね。
あの男、A級1位に居座るだけじゃなくて私の友達まで束縛して…
まあいいわ、気が向いたらいつでもこっちに来るのよ。
フブキ組として、歓迎するわ。
―うん、ありがとう。
私もフブキちゃんと一緒にヒーロー活動出来たら心強いよ。
ヒーロー協会から出ているスタンプに指を滑らすと、よく知った顔が流れて、
此処でアマイマスクのスタンプを選べば嫌がられそうだなと苦笑して一番使いやすい番犬マンを押す。
施設で出会ったフブキに手を引かれていたらどんなに気楽だろう。
すぐにそんな事を思ってしまう自分に嫌気がさす。
タツマキも、アマイマスクも、いう事は同じ、 ”キミはそこにいるだけでいい”
(そう、私は、ちょっと怪人の足止めが出来たり…上手くいけば操れたり…そういうことができる程度の、)
”貴女がいれば心強いわ、でも安心して、貴女の安全は私たちフブキ組が保証するもの”
(フブキ組……かぁ)
リラックス効果を促すアロマで、ゆっくりと意識が落ちていく。
大丈夫―…これはつけたまま寝ていいパック。だから……