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魔法の下着屋さん

第1章 魔法の下着屋さんの噂


「えっと……この先…かな?」
次の休日、予定のないサラは噂の店を探しに出かけていた。
友人の話を頼りに細い路地を曲がる。生まれ育ったこの街にこんな場所があったのかと、サラは辺りを見回した。
大通りから離れた路地の先に、その店はあった。
こじんまりとしているが、おとぎ話に出てきそうなとびきり可愛らしい外観。薄桃色のカーテンの隙間からそっと中を覗く。
「わぁ…」
店内には色とりどりの可愛い下着の数々。女の子なら誰でも胸の踊るような可愛い内装。ピンクと白を貴重に、シャンデリアもキラキラと光っている。その一つ一つに感動を覚えながら視線を奥にむけると…
「え…お、男の人…?」
店の奥に居たのは美しい……男性。
「え、ま、間違えた…?」
入口にかけられた看板を確認する、飾り文字で書かれた店名と、Openの可愛らしい看板。
間違いない。このお店だし、開いている。
もう一度店内を覗くが、やはり人は彼一人。レジ横のスツールに腰掛けていることからも店員さんのようだ。
(どうしよう…男性から下着買うなんて恥ずかしい…可愛い店員さんって聞いてたのに……店長さんとかで、従業員の休憩中だけいるとか…?)
出直そうか?と思うが、どうにも店内が気になる。離れ難い。今すぐ店に入りたい…そんな初めての感覚に襲われ離れることが出来ない。
(うーん…まぁ、ちょっと見るだけ見て、買うのは今度にしてもいいかな)
そう自分に言い聞かせ、サラはそっとドアを開けた。
カラン、とドアに付けられたベルが軽やかな音を立て、男性がこちらに視線を向ける。
「いらっしゃい」
爽やかに告げられ、サラは小さく頭を下げた。
(すごいイケメン…)
思わずたじろぐ。ミルクティー色の髪に、長いまつ毛に縁取られた切れ長の目。すっと通った鼻梁の下には薄い唇が美しく弧を描いている。芸能人でも見ないような顔立ちに、スラリと均整のとれた体。
(どうしよう、やっぱり落ち着かない…)
他の客の彼氏が居る時さえ苦手なのに、こんなイケメン店員から下着なんて買えない。そう思い店を出ようかと思う、が。
店内に漂う甘い香りに包まれると、何だかずっとここに居たいような不思議な気分になってしまう。
「ゆっくり見てってな」
そんなサラの様子をみすかしたように店員に声をかけられ、サラは頷くしかなかった。
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