第2章 近づく二人の距離
バルティゴ本部─
「俺の隣の部屋、空いてたよな?」
「わたしの部屋の隣、空いてるよね?」
サボとコアラのその一言でリラの部屋は、二人の部屋の間の部屋になった。
……コンコン…
部屋の整理をしていると、ノック音が聞こえてきた。
「はい?」
「俺だ、サボだ。」
「…どうぞ。」
サボが入って来た時、リラは高い所に荷物を置こうと背伸びをしていた所だった。
「…んしょ…」
腕を伸ばした時傷が痛み、荷物を落としそうになった。
「…あっ!」
(落ちちゃう…)
「無茶するな!」
そう言ってサボは、リラの後ろから、彼女をふわりと包み込むようにして荷物を受け止めた。
「危なかったな。」
「…あ、ありがとうございます…」
上から降ってきた優しい声と、背中に感じたサボに、鼓動が早くなった。
サボは、高いところに荷物を置くのを手伝ってくれた。
「他には、ない?」
「今のところは、大丈夫です。」
「腕、痛いんだろ?無茶するなよ。高いところのものを取れとか、遠慮なく呼んでくれて構わないから。」
ふわりと抱きしめられ、リラは固まった。
「…え…サボさん?」
「はっ!ご、ごめん、はははー、俺何やってんだろ。」
サボは慌てて腕を緩め、リラから離れた。
苦笑しながら、無意識に彼女を抱きしめていた自分に驚いた。彼女の可愛らしさに引き寄せられていたのだ。
リラはというと、さらに鼓動が早くなっていることに気がつき、胸に手を置いて深呼吸をして落ち着かせた。
「あ、えっと、何か用事があったのでは?」
「あ、いや、どんなかと思って様子見に来ただけだったから、ごめんね、邪魔しちゃって…」
ひらりと手を振り部屋を出ていく。リラの部屋の扉を背にして、サボは立ち尽くしていた。
(可愛いくて、つい抱きしめちまった…)