第5章 "過去"というライバル
「リラからのキスなんて、嬉しいなぁ…」
「助けてくれたお礼よ。なんだか、眠くなってきちゃった。」
「俺が傍にいれば眠れるんだよね。おやすみ、リラ。」
「おやすみなさい、サボ。」
サボは目を閉じたリラの唇に触れては離れ、触れては離れのキスを繰り返し落とし、目を閉じた。
すぐに腕の中から、寝息が聞こえてきて、サボは安心した。
翌朝、サボが先に目を覚ます。隣で眠る彼女はまだ起きそうにはない。
寝顔を見ていると、なんだか安心した。
ずっと見ていられると思った。
彼女の髪を撫で、キスを落とすと、髪の香りがサボの鼻をくすぐる。
そっと腕を抜いて身体を起こしたその時、リラは目を覚ました。
「……んん……サボ…?起きてるの?」
目を開けると、サボがリラを見つめていた。
「おはよう、起こしちゃったかな?」
サボの顔が近づき、おはようのキスが落とされた。
顔を赤らめ、おはよう、と返す。
「よく眠れた?」
身体を起こした彼女を抱きしめる。
「うん、サボが傍にいると安心して眠れる……守られてるって感じるから。」
サボはそんな彼女を愛しく思い、抱きしめる腕に力を込めた。
「可愛くて離したくない…リラ…」
サボの背中に腕を回し、ギュッと力を込めた。
「サボ、好きよ。」
サボの鼓動の早さを感じ、リラは目を閉じた。お互い抱きしめたまま、無言の時間が過ぎた。扉を叩く音が耳に届くまで。
彼女を守り抜くと決めた瞬間だった。彼女の穏やかな寝顔も笑顔も、失くしたくないと。そしてその感情は、サボの中に以前から誰かを守らなきゃならないという思いがあったことを気づかせた。
(俺は、リラ以外に守らなきゃならない奴がいた気がする…誰だ?!)