第3章 君があまりにも可愛くて
緩められたサボの腕は、リラの肩に添えられた。
「リラ。」
囁くような声でサボに呼ばれて顔を上げ、じっと見つめていると、サボの顔が近づいてきた。
コツン、と額と額がくっつき、あと少しで唇が重なる程の距離になり、心臓が煩いほど音を立てているのがわかる。
「このまま、リラの唇に触れたら、どうする?」
リラは慌てて額を離そうとするが、いつの間にか、回されたサボの手が優しく頭を押さえていて、離せない。
「サボ…離して…」
「大きい声を出す?その前に塞ぐけど…?」
「………」
リラは、黙り込んだ。
……!
サボの唇が、柔らかなリラの唇に優しく触れた。
いきなりのことに、目をぱちぱちさせて固まってしまった。
唇が重なった僅かな隙間からサボの舌が入り込む。
リラは驚いて、サボから離れようとするも、サボの腕はリラの腰に回っていて、離れられない。
必死にサボの胸を叩くも、鍛え上げられたサボの身体には効かなかった。
その手を取られてキスが続く。
サボの舌はリラの歯列をなぞり、歯茎をなぞり、リラの小さな舌を絡め取り、吸い上げる。
サボのキスに翻弄されるリラは、次第に強ばっていた身体の力が抜けていくのを感じた。
「んんッ…んッ…」
サボに与えられる唾液が受け止め切れず、唇の端から零れ落ちる。ゴクリと喉が鳴ると、サボはリラの唇を、チュッと吸い上げて離した。
「…はぁ…はぁ…はぁ」
上手く呼吸ができず、顔を赤くして肩で息をするリラは、涙目でサボを睨んだ。
「…サボの…バカ…」
口元を手の甲で拭い、サボの身体を突き放した。
「…ごめん…あまりに可愛くて…」
リラもサボも心臓の鼓動が早いのを感じていた。
「サボは…可愛い子なら、誰でもキスするんだ…」
「そんなことないっ!」
「可愛いからキスしたって、そういうことでしょ?好きじゃなくてもキスとか簡単にしちゃう人なんだね……見損なったわ。もう私に構わないでッ!」
サボの頬をひっぱたき、部屋を出ていった。