第27章 虹の袂
雅「太郎…着いたよ…」
太郎を抱いてばあちゃんの家に着き、俺はそのまま太郎の身体を玄関にそっとおろした
雅「ごめんな太郎…家の中は鍵が掛かってるから入れないんだ…」
太郎は下に降りると頭を上げて辺りをクンクンと匂っていた
そして…
「クーン…クーン…」
寂しそうに鳴いていた…
まるでばあちゃんを呼んでるかのように…
雅「太郎…」
俺は暫く太郎の身体を撫で続けていた…
すると突然太郎がピクッ…と身体を動かし顔を上げた
雅「…えっ…」
その太郎の視線に目を向けると…
雅「ばあ…ちゃん…」
翔「え?」
智「もしかして、キクさんがいるのか?」
皆には見えてないようだったけど、俺の目の前にばあちゃんが佇んでいた
生前の時と同じく、優しい笑顔で…
そして俺がばあちゃんに気をとられていると…
<ペロッ…>
雅「えっ…」
突然太郎が俺の手を舐めてきた…そして…
<パタッ…>
上げていた太郎の頭が床に倒れ…動かなくなった…
雅「太…郎…」
和「…よく頑張りましたね…太郎…」
潤「最期に雅紀兄さんにお礼したんだね…」
雅「お礼…なんて…俺何も…」
翔「お前がいなかったら、太郎は残り短い寿命も全う出来ず、保健所という暗い施設で安楽死させられる所だったんだ…最期にキクさんにも看取られて…幸せだったと思うよ…」
幸せ…だったのかな…
俺はその手助けが出来たのかな…
雅「太郎…たろー…っ」
俺はだんだん冷たくなっていく太郎の身体を抱きしめて涙が枯れるまで泣き続けた…