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星条旗のショアライン

第9章 スティーブ・ロジャース(MCU/嫉妬)



(2)

とはいえ慣れない大騒ぎ、とりわけ『はしゃぐ』事が縁遠かったせいか、帰宅した瞬間に一気に疲れが押し寄せてきた。だからもう難しい事を考えるのは無理。チーズフォンデュ美味しかったくらいしか頭にない。
「おかえり、レイン」
「!」
「遅かったな」
「あ、ああ……」
「僕に言うことがあるだろ」
だから……電気も点けない部屋の中、恐ろしいくらい笑顔のスティーブに間近まで詰め寄られたって打開策なんてものがさっぱり浮かばない。俺が後退ればその分の距離を詰められて、じりじりじりじりと壁際へ誘導されていく。
そもそも同居しているからこの場に彼がいることについては何ら疑問がない。『記憶や思い出が何十年も前で留まっている二人をわざわざ離れ離れにしておく必要が無い』とは部屋を提供してくれたS.H.I.E.L.D.の意向だ。それにつけても門限なんて制約はないし、彼にも遅くなる事をしっかり伝えておいた筈。怒りを顕にしながら追及される理由が見当たらなかった。
「……」
「黙っていたって分からないぞ」
「!」
聞いたような台詞を鼻先に落とされた直後だった。不意にスティーブの指先が頬を撫でてきた。つい驚いて振り払うように顔を背けると、俄然許さないとばかりに顎先を掴まれて無理やり正面を向かされる。暗闇の中で交わる浅瀬の瞳が真実を探ろうと忙しなく覗き込んでくるが、俺は気が引けていてスティーブの求める答えを見つけ出せずに居た。

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