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星条旗のショアライン

第6章 スコット・ラング(MCU/AoU後 AM)



「お疲れ様」
「あ、ありがとう! 憧れのヒーローに労われるなんて、こんな事ってあるんだな」
意外と早口だ。緊張で舌の回りが良くなっているのかと思いきや、寧ろ先程よりも落ち着いた雰囲気を醸し出している。再度差し出された手はもう震えていないし、握り返せば汗もかいていない。饒舌な人間は頭の回転も早いと言われている。物腰柔らかそうな見た目や現在のポップな職業とは結びつかないような学歴や経歴を持っているのかもしれない。
「俺はスコット・ラングだ。スコットって呼んでくれ」
「俺はレイン・フリーマンだ」
「勿論知ってるよ、任せて。これでも子供の時はスミソニアン博物館に通ってたんだ。元々はキャプテン・アメリカのファンでね。彼かっこいいよな、男なら一度は憧れるって。ああごめん脱線した、なんだっけ……そう、君の記述も隅から隅まで読んだよ、若いのに苦労したんだなって思ったら感情移入しちゃってさ。個人的にはバッキーより好きかも。ほらバッキーって色男キャラだろ、俺には合わないんだよね。あっ、キャプテンの親友を悪く言っちゃダメだよな。子供の目にはいけ好かない奴に映っただけなんだ、気を悪くしないで。それで……――」
「待て待てスコット……スコット!」
制止する俺を不思議そうに見詰めているところ悪いが、ここはまだ君の職場だし握手もしたままだし何より話が長い。ヒーローに会えて昂る気持ちは推して測るから、せめて落ち着ける場所に移動しないか。頭を抱えながらスコットに提案すると、彼は思い出したように手を離して苦笑いを零した。

(3)

電話を切ると、隣に座るスコットは申し訳なさそうに眉を下げた。自分に懐いた犬が悄気たように見えるから止めて欲しい。いやに庇護欲を唆る男だ。身体の大きさが身の回りの男性陣に比べてアメリカンナイズとは言えないし俺よりも筋肉がないように見えるせいか、なんとも言えない愛くるしさを抱く。胃の下がムズムズするような感覚は初めてだ。
「ごめんな」
「別にいいさ。”彼”も俺に頼み事をされて喜んでいたし」
近くの公園へ移動したは良いが、アイスクリームを太陽の下には置いておけない。だからS.H.I.E.L.D.のとあるエージェントに連絡を入れて引き取りに来てもらうよう頼んだのだ。ソコヴィアの戦いで俺に感銘を受けたらしい”彼”は、俺からの直通電話を忠犬のように待っている。

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