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星条旗のショアライン

第4章 【長編】スティーブ・ロジャース(MCU/WS)



(2)

俺達を乗せた一台のクインジェットはインド洋の上空を滑らかに進む。海上の朧雲を切り裂いて闇夜に溶け込む機体は、とある作戦地点を忠実に目指していた。対テロ作戦部隊を率いるエージェント・ラムロウは機内の電子モニターを器用に操り、今回の任務内容について説明を始める。
「船の名前はレムリア・スター。移動式の衛星打ち上げ用プラットフォームだ。これが海賊に奪われた。九十三分前だ」
「要求は?」
「十五億ドル」
「何故そんな高い」
「シールドの船だから」
領海ではない場所にS.H.I.E.L.D.の船。ただの救出任務だと思っていたキャプテンの顔に呆然とした表情が乗る。隣の俺を素早く振り返り、視線を差し向けてきて「君は知っていたのか」と言外に訴えてくるので、首を左右に振って否定しておいた。
「領海侵犯をしてたのか」
「なにか理由があるんでしょ」
「フューリーの尻拭いはもううんざりだ」
「文句言わない。楽勝でしょ」
キャプテンの最もな不満をナターシャが言葉尻を掻き消す様に言いくるめる。怪訝な表情をやめない彼は一瞬の内に周囲の状況と任務に対する温度差、秘められた思惑がある事を拾い尽くして把握したらしい。更には断片的なピースを少しずつ組み立てようとラムロウに船の状況を続けて説明するよう促した。

(3)

船を占拠している傭兵は二十五人。リーダーはフランスの元秘密工作員であるジョルジュ・バトロック。三十六人の暗殺任務を遂行するほどの実力を持ち、現在ICPOが指名手配中。その性質は派手に犠牲者を出すことで有名らしい。
(それも海賊に陥ちてしまえば形無しだな……)
人質の大半が技術者の中、ジャスパー・シットウェルが調理室に囚われていると聞いた時はキャプテンの中で思うところがあったのかひとつ唸り声を上げたけれど、それっきり立て直して作戦を構築し、チーム全体に指示を出した。その素早さと的確さは皆が信用している。自然とリーダーに押し上げられるのも納得だ。
(生まれ持ったものなんだろう)

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