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星条旗のショアライン

第2章 スティーブ・ロジャース(MCU/As後)



――あれからまだ話は続いていたらしい。車輪が甲から乙まで回るように。フィルの幻影が俺を捉えて離さないまま、こんなところまで波及している。
(……嗚呼)
スティーブは昔の俺と今の俺を知る唯一の人間だ。この手の話題が上がった時に一番複雑な疑問を持つのも彼一人だろう。『話し方が変化した』事は一見すれば、さほど不思議な事ではない。思春期を経て自我を得た子供などは殻を破って新たな自分を形成する事だっておかしくはない。そういった自然な理由を考慮して彼が追求の手を向けなかったのも、俺と距離が近いせいで気まずさを避けた結果だとしたら賢明だ。
しかしナターシャによって俺自身が『話し方の変化』についてワケありである事を証明してしまった。そうなれば同じ条件下において詮索するのが心配性なスティーブ・ロジャースなのだ。意思が揺らぐ様は逐一ブルーの瞳が余さず拾う。彼は欲している、俺の変化の理由を。この悲しみの理由を。寂寞を。
「そうか」と、俺が全て吐露すれば彼はそう呟いて頷くだろう。同情と、喪った仲間への悲しみを混ぜ込んだ切ない表情で。聞き出して悪かったなんて無責任な事を言わないだろうし、共に背負ってくれる気もする。お人好しだとつくづく思うが、それが彼の愛するところだ。
(……)
カフェテラスから街を選瞥する。グレーのビル景色に溶け入るカラフルな乗り物たち。その中で広告を載せた大型のバスが交差点を曲がると、赤く光るトラフィックライトの下でフィルが俺を睨み据えていた。



終わり
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